一体どれほどこの日を待ち望んだことだろう。
24年。
文字にしてしまうとたった3文字だが、ラグビー選手、ファン、協会・・・全ての日本ラグビーに関わる人々にとって果てしなく感じられた歳月だった。
僕に関して言えば、その半分、つまり2003年、今僕のいるオーストラリアでワールドカップが開かれたときからのファンなので、12年間待ち望んでいたこととなる。
この12年間、大畑大介選手や小野澤宏時選手といったフィニッシャー陣はもちろん、神戸製鋼、サントリー、トヨタといった社会人リーグのトップレベルの選手やトップレベルの大学生を集めた、まさにドリームチームで「今回こそ勝てる!」と臨んできたが、蓋を開けれてみればいつも負け。最高で引き分けという結果しかなかった。
アジアで無双の強さを誇るにも関わらず、ワールドカップでは勝利できない。僕にとって、ラグビー日本代表は「敗北」あるいは「弱者」の2文字でしかイメージできない存在で、「ブレイブ・ブロッサムズ」という日本代表の愛称も「弱者が強者へ挑戦する」という意味での「ブレイブ」(人によっては単に「無謀」ともいうだろう)ではあったが、真に「勇気」と呼べる、感じられる選手たちの姿はそこにはなかった。
今回のワールドカップで同じプールに入った、南アフリカ、スコットランド、サモア、アメリカも、日本を勝点4の計算出来うる相手だと認識していたはずだ。
そうして始まった中で事件が起きた。
ブライトンの衝撃。
もはや多くを語るまでもないが、古くからのファンほど、この試合は心を打たれた。相手は北半球のチームにはウェールズしか負けたことのない(30回やって2回)、ワールドカップ最強勝率を誇る南アフリカ。
試合の勝利を決めたヘスケス選手のトライの瞬間はもちろん、その前のサインプレーの五郎丸選手のトライーいや、そこまでの互角に戦う姿を見ているだけでこみあげてくるものがあった。この試合でマン・オブ・ザ・マッチを獲得した、ワールドカップ参加選手の中で最も小さな(166㎝)のスクラムハーフ(SH)の田中選手が「何回でも泣ける」というコメントを残していたが、それは我々ファンも同じだ。
言うまでもなく、ラグビー日本代表は歴史を変えた。ご存知の通り、日本代表は史上初、3勝1敗でワールドカップを一次リーグで去ったが、こんなにワールドカップを楽しいものにしてくれたチームは他にない。
さて、ラグビー日本代表は今回のワールドカップをキッカケに国内の人気を取り戻しつつあるが、それと同時に常に勝利を求められる存在となり、戦う敵チームにとっては「危険な存在である」と認めさせることになった。もう今回の南アフリカのように「舐めて」かかっては来てくれない。どのチームも日本を研究し、弱点をついてくる。改めて、ワールドカップベスト8ーすなわち、ティア1と呼ばれるラグビー強豪国への真の挑戦が始まる。
次の大きな舞台は4年後の2019年、場所は日本。会場は北は札幌から、南は大分までの全12箇所で開催され、熱狂的なファンが世界から集まることとなる。開催地各地の飲食店はその実利を得ることになるわけだが、英語対応についてはもちろん考えなければいけないだろう。
日本ラグビー協会もこれからスーパーラグビーへの挑戦など様々な任務に追われることとなる。特に、今回のワールドカップで出来た火種をどう大きく国内で盛り上げていくのか、その手腕は問われる。エディHCの退任も含め、日本的システムの中での調整の問題は既に露呈している。そんな協会がどう日本ラグビーを作り上げていくかに注目。ハードワークしている選手たちがしっかりと報われる日本ラグビー界になってほしいと願うばかりだ。
なんにせよ、今回のワールドカップで、初めて名に恥じない活躍を見せてくれた選手たち、そしてそれをサポートしたコーチ・スタッフの皆様には感謝したい。ありがとう、日本代表。
ワールドラグビーによる日本代表のベストシーン。やはり何度見ても泣ける。
試合後の選手の話や各試合の詳細な分析が書かれてます。
南アフリカがあの敗戦をどう捉えたのかが個人的には興味深かった。

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